モダンのデルバーについて考える。
2017年4月12日 Magic: The Gathering自己紹介記事からおよそひと月、何を書こうかと考えつつデッキを回して過ごしていたら、だいぶ間が開いてしまいました。
今回は1年弱ほどモダン&レガシーでだらだらとデルバーを回してきた経験則を元に、モダンのデルバーについて考えたものを、レガシーと比較しながらつらつらと書いてみたいと思います。
とはいえ、知識や経験はまだまだ浅いので、生暖かい目でお読みいただければと思います。「ここは違うぞ!」などなど思う所あれば、コメントで指摘いただけると幸いです。
●現在のデルバーデッキ
そもそもデルバーデッキ「Delver-Go」とはなんぞや?といった方はこちらを。
『Delver-Go - MTG Wiki』 http://mtgwiki.com/wiki/Delver-Go
変身すれば1マナ3/2飛行。何考えて刷ったんだという強烈な性能を持つ《秘密を掘り下げる者》を中心に据えたデッキです。
アーキタイプ的には「ビートダウン」と「コントロール」の中間の「ビート・コントロール」、俗に「クロックパーミッション」と呼ばれるものになりますね。
私は彼がスタン現役の時代を知らないのですが、なかしゅーさん(殿堂プレイヤー、中村修平さん)の『なかしゅー世界一周』を拝見するに、スタンの頃から頭一つ抜けていたようです。
参考:『なかしゅー世界一周2012・第2回:プロはなぜ強いのか?~オーランドにて』 http://mtg-jp.com/reading/variety/002806/
さて、そんな彼の現在の主戦場はいわゆる「下環境」。特にモダンとレガシーの2つになります。
ヴィンテージやPauperといったフォーマットでもそれなりに数はありますが、ここでは割愛。
モダンとレガシーのどちらにおいても、デルバーデッキは
①デルバー等のクロックを置く
②打ち消しや除去で蓋をしながら殴る
というゲームの流れを目指していますが、カードプール&それに伴うメタゲームの違いから、採用する戦術には大きな違いがあります。
●レガシーのデルバー、モダンのデルバー
・レガシーの場合
レガシーのデルバーデッキにおいて特徴的な戦術に「マナ否定戦術」が挙げられます。
《不毛の大地》や《もみ消し》(最近はどうかわかりませんが《陥没孔/Sinkhole》なども?)を採用し、相手の土地を縛り上げて低いマナ域に縛り付け、あわよくば相手に何も呪文を打たせさせないまま殴り勝ってしまおうという戦術。
仮にこれが成功せずとも、大量に搭載された《意志の力/Force of Will》をはじめとする歴代の強力な打ち消し呪文によって強引に押さえつけることも可能です。
もちろんそう易々と毎回成功して勝てるわけではありませんが……2017年現在において、もはや古代兵器に近いようなCanadian Thresholdが、SCGの大会などで時おり好成績を残していることは、相手に呪文を使わせないこの「マナ否定戦術」が強固であることを示しているといえるでしょう。
また「マナ否定戦術」自体は構築上の負担が少ないため、この他にも“丸さ”を求める構築も見られるようになってきました。
具体的には黒のハンデスや除去&探査クリーチャーの採用、あるいはもっと大胆にBUGミッドレンジとハイブリッドしようといった傾向がそれです。
そしてそうした構築を取りやすいグリクシスデルバーや4Cデルバーが、2017年現在のデルバーデッキにおける主流となってい(ると認識しており)ます。
・モダンの場合
モダンにはマナ否定戦術に用いられる《不毛の大地》等も、《意志の力/Force of Will》等の強烈な打ち消し呪文も存在しません。
そもそも環境の打ち消し呪文やドロー呪文がレガシーと比べてカードパワーが足りず、それらを中心とする“青い”デッキには向かい風気味です。
数少ない強力な打ち消し呪文《謎めいた命令》もコンセプト的には採用が厳しく、その一方で押しつける側のパワーはそれなりに高い水準でまとまっていることの多い環境。
これらを打破するために、デルバーデッキはどういった戦法を取ったのか。
結論から言えば、若干構築を重くしコントロールデッキに寄せ、パワーの底上げを図る構築が主流となっています。
その屋台骨となるのは《瞬唱の魔道士》の採用。
モダンとレガシーのデルバーデッキを分ける最大の特徴は、このポルトガルだかアジアだかブラジルだかラテン圏だかどこから来たのかわからない魔道士の圧倒的な採用率です。
モダンの青系コントロール全般、そしてレガシーの奇跡コントロールを支える、いわば下環境コントロールの大黒柱。
振り返ってみれば、スタン時代にも《秘密を掘り下げる者》と同時採用されている場合が多かったみたいですね。
彼を採用する最大のメリットは、大量に搭載されたスペルを使いまわすことが出来る、すなわち実質倍の数のカードで戦っていると考えられる点です。
30枚インスタントソーサリー呪文が採用されていれば、60枚分のリソースで戦っているようなものだということ。
いやまぁもちろん実際はそんなことは一切ないのですが、感覚的にはおよそそんな感じにざっくり考えてもいいのでは、と。
もちろんデメリットもあります。それは「2マナクリーチャーに見えて実質3マナ以上のクリーチャーである」という点。
これは運用上、9割方フラッシュバックコストも併せて必要とするためであり、安定して仕事ができるのは土地が4~5枚並んだ頃になります。
土地を切り詰める発想のデルバーデッキとは矛盾するようなクリーチャーですね。
もちろん実際のゲームでは、対戦が長引くほど土地が伸びる確率も上がりますから、土地を切り詰める発想と完全に矛盾しているかというとそうでもなかったりしますが。
そのためレガシーと比較して、インスタントやソーサリーの枚数を数枚減らし、代わりにそこへ土地を入れ、追加のクリーチャーも重くする傾向が見られるのが、モダンのデルバーデッキのもう一つの特徴。
《ヴェンディリオン三人衆》や「トリコ(白青赤)デルバー」における《聖トラフトの霊》などがそれにあたり、タルキールブロック以降の各種探査クリーチャーや《僧院の導師》もこれらに入ります。
《瞬唱の魔道士》の採用、追加のクロック要因を重めのクリーチャーへと交換、土地の微増量をすることによって、コントロールデッキとして立ち回ることも可能になったのが、モダンのデルバーデッキです。
(余談ですが、「トリコデルバー」ではいわゆる「ナヒリシュート」のギミックを取り入れたものも……)
●現在のモダンのデルバー
2017年4月現在、モダンで主流となっているのは「グリクシス(青黒赤)デルバー」です。
参考:『グランプリ・広州2016 トップ8プレイヤーデッキリスト(モダン)』 http://coverage.mtg-jp.com/gpgua16/decklist/017404/
GP広州2016の優勝デッキがAlbertus Lawさんのグリクシスデルバー。《ギタクシア派の調査》禁止前ですので、現在も同様のパワーがあるとは言い切れませんが。
余談ですが、この決勝カバレージも中々良いです。
主流、というか強いとされる理由はざっくりと以下の2点。
①《突然の衰微》や《致命的な一押し》、《コジレックの審問》の存在から、それらによって対処されない探査クリーチャーが採用できる
②相手の探査クリーチャーに対抗できる《終止》、《瞬唱の魔道士》との相性が抜群の《コラガンの命令》が採用可能
これらにより「安全にクロックを出すこと」、「相手の脅威に対処し蓋をしやすい」というデルバーデッキの要件を満たせているというわけです。
《コラガンの命令》で《瞬唱の魔道士》を使いまわす動きも本当に強く、後半のリソース勝負にもしっかりと追い付ける構築になっています。
ちなみにその後半の粘り強さに注目し、殿堂プレイヤーPatrick Chapinさんがデルバーを抜いた形の「グリクシスコントロール」を示したりしています。
参考:『CONTROLLING MODERN WITH PATRICK CHAPIN』 http://magic.wizards.com/en/events/coverage/gpcha15/controlling-modern-patrick-chapin-2015-06-14
参考:『モダンの達人 vol.6 -グリクシスコントロール-』 http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/1471
また今後の禁止・制限改訂次第では変わってくるかもしれませんが、《死の影》を取り入れテンポを重視した「グリクシスシャドウ」も現れました。
参考:『岩SHOWの「デイリー・デッキ」:死の影グリクシス(モダン)』 http://mtg-jp.com/reading/iwashowdeck/0018491/
参考:『MODERN MOCS(記事中の“yamakiller”のデッキ)』 http://magic.wizards.com/en/articles/archive/mtgo-standings/modern-mocs-2017-03-27
回したことが無いので何とも言えませんが、どちらかといえばこちらの方がクロックパーミッションらしいデッキかもしれません。
翻ってグリクシスデルバーを見返すと、「《秘密を掘り下げる者》の存在から、コントロールデッキの前半戦の立ち回り方にバリエーションを持たせられる」、「《瞬唱の魔道士》と探査クリーチャー、各種スペルから、クロックパーミッションの苦手な後半戦も戦える」、という、両方の良い所取りのような戦い方が可能となっているといえるでしょう。
その反面、どちらにも振り切れずもっさりしてしまっている、いわば器用貧乏な側面があるのは確かなのですが……相手によって、またゲームによって立ち回り方を柔軟に変えられるのは、このデッキの醍醐味であり、強みであると感じています。
●最後に
カウンタースリヴァーやフェアリーのようなクロックパーミッションと比べ、デルバーデッキはその構築内容から、コントロールとの線引きが曖昧なデッキだと感じます(そもそもクロックパーミッションとコントロールの線引きについてまず考察するべきなのかはわかりませんが)。
横にクリーチャーが並ぶことも、強烈な全体除去や巨大なフィニッシャーを唱えることも少なく、淡々とアドバンテージを稼ぎながらこつこつ蓋をしつつ殴る。
レガシーにおいてはともかく、モダンのデルバーデッキはその傾向が特に強いと感じます。
ですので、もしも現在、モダンでデルバーデッキを使っていて、「これはクロックパーミッションだ」という解説がまず念頭にあるとして。
回しても中々勝てない、今一つピンと来ていない方が居たら。
「クロックパーミッションとコントロールをその場で使い分けられる、だいぶふわっとしたデッキ」なのだと考えてみると、恐らく違って見えてくるのではないでしょうか。
ネットの辺境の独り言にお付き合いいただき、ありがとうございました。
願わくば、これを読んだ方の《秘密を掘り下げる者》が、ほんの少しだけ変身しやすくなりますように。
あと、欲を言うなら僕の手元の《秘密を掘り下げる者》も、もう少しだけ変身させてください。
●付録
記事の年代は様々ですが、デルバーデッキをいくつか紹介しておきたいと思います。
参考までにレガシーも……っていうかレガシーの方が多いな?
※晴れる屋さん、Star City Gamesさんのデータベース掲載のデッキリストの場合は記事タイトルを割愛しています。
・モダンのデルバーデッキ
RUGデルバー:『Daily Deck ティムール・デルバー(モダン)』 http://mtg-jp.com/reading/translated/dd/0015158/
白青赤デルバー: http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05240W/
グリクシスデルバー: http://sales.starcitygames.com//deckdatabase/displaydeck.php?DeckID=111982
・レガシーのデルバーデッキ
RUGデルバー:『のぶ夫の部屋 -第1回 RUGデルバー前編-』 http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/125
BUGデルバー:『Deck Tech: 土屋 洋紀の「BUG Delver」』 http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/2278
URデルバー:『岩SHOWの「デイリー・デッキ」:URデルバー(レガシー)』 http://mtg-jp.com/reading/iwashowdeck/0017700/
グリクシスデルバー:『レガシーデッキ案内 -グリクシスデルバー-』 http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/3673
4Cデルバー:『Browse the Deck! Vol.2 「4Cデルバー」』 http://mtg.bigmagic.net/article/%E8%A8%98%E4%BA%8B/%E3%83%AC%E3%82%AC%E3%82%B7%E3%83%BC/%E6%97%A5%E4%B8%8B%E9%83%A8%E6%81%AD%E5%B9%B3/002
英語ですが、ChannelFireBallのリード・デュークによる、レガシーでのデルバーデッキの解説記事も。
『Legacy Guide Part VI: Delver By Reid Duke // 8 Mar, 2017』 https://www.channelfireball.com/articles/legacy-guide-part-vi-delver/
今回は1年弱ほどモダン&レガシーでだらだらとデルバーを回してきた経験則を元に、モダンのデルバーについて考えたものを、レガシーと比較しながらつらつらと書いてみたいと思います。
とはいえ、知識や経験はまだまだ浅いので、生暖かい目でお読みいただければと思います。「ここは違うぞ!」などなど思う所あれば、コメントで指摘いただけると幸いです。
●現在のデルバーデッキ
そもそもデルバーデッキ「Delver-Go」とはなんぞや?といった方はこちらを。
『Delver-Go - MTG Wiki』 http://mtgwiki.com/wiki/Delver-Go
変身すれば1マナ3/2飛行。
アーキタイプ的には「ビートダウン」と「コントロール」の中間の「ビート・コントロール」、俗に「クロックパーミッション」と呼ばれるものになりますね。
私は彼がスタン現役の時代を知らないのですが、なかしゅーさん(殿堂プレイヤー、中村修平さん)の『なかしゅー世界一周』を拝見するに、スタンの頃から頭一つ抜けていたようです。
参考:『なかしゅー世界一周2012・第2回:プロはなぜ強いのか?~オーランドにて』 http://mtg-jp.com/reading/variety/002806/
さて、そんな彼の現在の主戦場はいわゆる「下環境」。特にモダンとレガシーの2つになります。
ヴィンテージやPauperといったフォーマットでもそれなりに数はありますが、ここでは割愛。
モダンとレガシーのどちらにおいても、デルバーデッキは
①デルバー等のクロックを置く
②打ち消しや除去で蓋をしながら殴る
というゲームの流れを目指していますが、カードプール&それに伴うメタゲームの違いから、採用する戦術には大きな違いがあります。
●レガシーのデルバー、モダンのデルバー
・レガシーの場合
レガシーのデルバーデッキにおいて特徴的な戦術に「マナ否定戦術」が挙げられます。
《不毛の大地》や《もみ消し》(最近はどうかわかりませんが《陥没孔/Sinkhole》なども?)を採用し、相手の土地を縛り上げて低いマナ域に縛り付け、あわよくば相手に何も呪文を打たせさせないまま殴り勝ってしまおうという戦術。
仮にこれが成功せずとも、大量に搭載された《意志の力/Force of Will》をはじめとする歴代の強力な打ち消し呪文によって強引に押さえつけることも可能です。
もちろんそう易々と毎回成功して勝てるわけではありませんが……2017年現在において、もはや古代兵器に近いようなCanadian Thresholdが、SCGの大会などで時おり好成績を残していることは、相手に呪文を使わせないこの「マナ否定戦術」が強固であることを示しているといえるでしょう。
また「マナ否定戦術」自体は構築上の負担が少ないため、この他にも“丸さ”を求める構築も見られるようになってきました。
具体的には黒のハンデスや除去&探査クリーチャーの採用、あるいはもっと大胆にBUGミッドレンジとハイブリッドしようといった傾向がそれです。
そしてそうした構築を取りやすいグリクシスデルバーや4Cデルバーが、2017年現在のデルバーデッキにおける主流となってい(ると認識しており)ます。
・モダンの場合
モダンにはマナ否定戦術に用いられる《不毛の大地》等も、《意志の力/Force of Will》等の強烈な打ち消し呪文も存在しません。
そもそも環境の打ち消し呪文やドロー呪文がレガシーと比べてカードパワーが足りず、それらを中心とする“青い”デッキには向かい風気味です。
数少ない強力な打ち消し呪文《謎めいた命令》もコンセプト的には採用が厳しく、その一方で押しつける側のパワーはそれなりに高い水準でまとまっていることの多い環境。
これらを打破するために、デルバーデッキはどういった戦法を取ったのか。
結論から言えば、若干構築を重くしコントロールデッキに寄せ、パワーの底上げを図る構築が主流となっています。
その屋台骨となるのは《瞬唱の魔道士》の採用。
モダンとレガシーのデルバーデッキを分ける最大の特徴は、この
モダンの青系コントロール全般、そしてレガシーの奇跡コントロールを支える、いわば下環境コントロールの大黒柱。
振り返ってみれば、スタン時代にも《秘密を掘り下げる者》と同時採用されている場合が多かったみたいですね。
彼を採用する最大のメリットは、大量に搭載されたスペルを使いまわすことが出来る、すなわち実質倍の数のカードで戦っていると考えられる点です。
30枚インスタントソーサリー呪文が採用されていれば、60枚分のリソースで戦っているようなものだということ。
いやまぁもちろん実際はそんなことは一切ないのですが、感覚的にはおよそそんな感じにざっくり考えてもいいのでは、と。
もちろんデメリットもあります。それは「2マナクリーチャーに見えて実質3マナ以上のクリーチャーである」という点。
これは運用上、9割方フラッシュバックコストも併せて必要とするためであり、安定して仕事ができるのは土地が4~5枚並んだ頃になります。
土地を切り詰める発想のデルバーデッキとは矛盾するようなクリーチャーですね。
もちろん実際のゲームでは、対戦が長引くほど土地が伸びる確率も上がりますから、土地を切り詰める発想と完全に矛盾しているかというとそうでもなかったりしますが。
そのためレガシーと比較して、インスタントやソーサリーの枚数を数枚減らし、代わりにそこへ土地を入れ、追加のクリーチャーも重くする傾向が見られるのが、モダンのデルバーデッキのもう一つの特徴。
《ヴェンディリオン三人衆》や「トリコ(白青赤)デルバー」における《聖トラフトの霊》などがそれにあたり、タルキールブロック以降の各種探査クリーチャーや《僧院の導師》もこれらに入ります。
《瞬唱の魔道士》の採用、追加のクロック要因を重めのクリーチャーへと交換、土地の微増量をすることによって、コントロールデッキとして立ち回ることも可能になったのが、モダンのデルバーデッキです。
(余談ですが、「トリコデルバー」ではいわゆる「ナヒリシュート」のギミックを取り入れたものも……)
●現在のモダンのデルバー
2017年4月現在、モダンで主流となっているのは「グリクシス(青黒赤)デルバー」です。
参考:『グランプリ・広州2016 トップ8プレイヤーデッキリスト(モダン)』 http://coverage.mtg-jp.com/gpgua16/decklist/017404/
GP広州2016の優勝デッキがAlbertus Lawさんのグリクシスデルバー。《ギタクシア派の調査》禁止前ですので、現在も同様のパワーがあるとは言い切れませんが。
余談ですが、この決勝カバレージも中々良いです。
主流、というか強いとされる理由はざっくりと以下の2点。
①《突然の衰微》や《致命的な一押し》、《コジレックの審問》の存在から、それらによって対処されない探査クリーチャーが採用できる
②相手の探査クリーチャーに対抗できる《終止》、《瞬唱の魔道士》との相性が抜群の《コラガンの命令》が採用可能
これらにより「安全にクロックを出すこと」、「相手の脅威に対処し蓋をしやすい」というデルバーデッキの要件を満たせているというわけです。
《コラガンの命令》で《瞬唱の魔道士》を使いまわす動きも本当に強く、後半のリソース勝負にもしっかりと追い付ける構築になっています。
ちなみにその後半の粘り強さに注目し、殿堂プレイヤーPatrick Chapinさんがデルバーを抜いた形の「グリクシスコントロール」を示したりしています。
参考:『CONTROLLING MODERN WITH PATRICK CHAPIN』 http://magic.wizards.com/en/events/coverage/gpcha15/controlling-modern-patrick-chapin-2015-06-14
参考:『モダンの達人 vol.6 -グリクシスコントロール-』 http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/1471
また今後の禁止・制限改訂次第では変わってくるかもしれませんが、《死の影》を取り入れテンポを重視した「グリクシスシャドウ」も現れました。
参考:『岩SHOWの「デイリー・デッキ」:死の影グリクシス(モダン)』 http://mtg-jp.com/reading/iwashowdeck/0018491/
参考:『MODERN MOCS(記事中の“yamakiller”のデッキ)』 http://magic.wizards.com/en/articles/archive/mtgo-standings/modern-mocs-2017-03-27
回したことが無いので何とも言えませんが、どちらかといえばこちらの方がクロックパーミッションらしいデッキかもしれません。
翻ってグリクシスデルバーを見返すと、「《秘密を掘り下げる者》の存在から、コントロールデッキの前半戦の立ち回り方にバリエーションを持たせられる」、「《瞬唱の魔道士》と探査クリーチャー、各種スペルから、クロックパーミッションの苦手な後半戦も戦える」、という、両方の良い所取りのような戦い方が可能となっているといえるでしょう。
その反面、どちらにも振り切れずもっさりしてしまっている、いわば器用貧乏な側面があるのは確かなのですが……相手によって、またゲームによって立ち回り方を柔軟に変えられるのは、このデッキの醍醐味であり、強みであると感じています。
●最後に
カウンタースリヴァーやフェアリーのようなクロックパーミッションと比べ、デルバーデッキはその構築内容から、コントロールとの線引きが曖昧なデッキだと感じます(そもそもクロックパーミッションとコントロールの線引きについてまず考察するべきなのかはわかりませんが)。
横にクリーチャーが並ぶことも、強烈な全体除去や巨大なフィニッシャーを唱えることも少なく、淡々とアドバンテージを稼ぎながらこつこつ蓋をしつつ殴る。
レガシーにおいてはともかく、モダンのデルバーデッキはその傾向が特に強いと感じます。
ですので、もしも現在、モダンでデルバーデッキを使っていて、「これはクロックパーミッションだ」という解説がまず念頭にあるとして。
回しても中々勝てない、今一つピンと来ていない方が居たら。
「クロックパーミッションとコントロールをその場で使い分けられる、だいぶふわっとしたデッキ」なのだと考えてみると、恐らく違って見えてくるのではないでしょうか。
ネットの辺境の独り言にお付き合いいただき、ありがとうございました。
願わくば、これを読んだ方の《秘密を掘り下げる者》が、ほんの少しだけ変身しやすくなりますように。
あと、欲を言うなら僕の手元の《秘密を掘り下げる者》も、もう少しだけ変身させてください。
●付録
記事の年代は様々ですが、デルバーデッキをいくつか紹介しておきたいと思います。
参考までにレガシーも……っていうかレガシーの方が多いな?
※晴れる屋さん、Star City Gamesさんのデータベース掲載のデッキリストの場合は記事タイトルを割愛しています。
・モダンのデルバーデッキ
RUGデルバー:『Daily Deck ティムール・デルバー(モダン)』 http://mtg-jp.com/reading/translated/dd/0015158/
白青赤デルバー: http://www.hareruyamtg.com/jp/k/kD05240W/
グリクシスデルバー: http://sales.starcitygames.com//deckdatabase/displaydeck.php?DeckID=111982
・レガシーのデルバーデッキ
RUGデルバー:『のぶ夫の部屋 -第1回 RUGデルバー前編-』 http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/125
BUGデルバー:『Deck Tech: 土屋 洋紀の「BUG Delver」』 http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/2278
URデルバー:『岩SHOWの「デイリー・デッキ」:URデルバー(レガシー)』 http://mtg-jp.com/reading/iwashowdeck/0017700/
グリクシスデルバー:『レガシーデッキ案内 -グリクシスデルバー-』 http://www.hareruyamtg.com/article/category/detail/3673
4Cデルバー:『Browse the Deck! Vol.2 「4Cデルバー」』 http://mtg.bigmagic.net/article/%E8%A8%98%E4%BA%8B/%E3%83%AC%E3%82%AC%E3%82%B7%E3%83%BC/%E6%97%A5%E4%B8%8B%E9%83%A8%E6%81%AD%E5%B9%B3/002
英語ですが、ChannelFireBallのリード・デュークによる、レガシーでのデルバーデッキの解説記事も。
『Legacy Guide Part VI: Delver By Reid Duke // 8 Mar, 2017』 https://www.channelfireball.com/articles/legacy-guide-part-vi-delver/
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